10月25日午前10時30分から、静岡地方裁判所201号法廷にて、第6回口頭弁論期日が開かれました。
私たちは、意見書、求釈明申立書、準備書面5、証拠類を提出しました。
原告提出資料はこちらから、ご覧下さい。
今回私達は、被告に対し、
(1)被告は、現時点において、内閣府に設置された「南海トラフの巨大地震モデル検討会」の報告で示された震源断層モデル及びここから導かれる地震動に基づき、想定される応答加速度・応答スペクトル等を見直し、これに基づく動的解析を行い、浜岡原子力発電所の耐震設計の再検証を行っているか否か。
(2)被告は、現時点において、同検討会の報告で示された想定される津波高の津波(T.P19m)が襲来した場合、起こり得るすべての事態を想定し、かつ、浜岡原子力発電所のすべての施設の損傷程度、機能不全程度を予測し、その上で原子炉の健全性が保てるか否かの再検証を行っているか否か。
(3)被告は、前記(1)(2)の検討結果によっては、浜岡原子力発電所の廃止措置を決断することがあり得るか。
について回答を求める書面を提出しました(求釈明申立書はこちら)。
(3)は、被告に、浜岡原発廃炉決断の余地はないのか(はじめに結論ありきなのか)、廃炉決断の余地があるのかを聞いたものです。被告の回答を待ちたいと思います。
原告準備書面5では、5号機特有の問題点、取水設備の機能不全による炉心損傷の危険性、被告の想定地震動が小さすぎるという問題などを指摘しています。
5号機特有の問題点の一つは、5号機が「改良型沸騰水型軽水炉(Advanced Boiling Water Reactor = ABWR)」であるということです(1~4号機は「Mark-Ⅰ型」と呼ばれる「沸騰水型軽水炉(BWR)」)。
改良型沸騰水型軽水炉では、従来型の沸騰水型軽水炉と比較して、様々な設計上の変更等が行われていますが、主な特徴・相違点として、
① 原子炉冷却再循環系にインターナルポンプを採用していること
② 電動駆動方式を備えた改良型制御棒駆動機構を採用していること
③原子炉格納容器につき原子炉建屋と一体構造の鉄筋コンクリート製原子炉格納容器(RCCV)となっていること
が挙げられます。
今回の準備書面では、この①~③の特色の概要を説明した上で、それぞれの特色が抱える耐震上の問題点を指摘しています。
また、5号機特有の問題点の二つ目は、5号機への海水流入事故です。
広く報道されているとおり、2011(平成23)年5月14日、浜岡原子力発電所5号機において原子炉減圧操作中、主復水器の細管が幅14センチメートル、深さ約70センチメートルの範囲で43本が損傷し、2本が変形したことにより、海水が流入するという事故が発生しました。
原子力安全・保安院発表の資料によると、この事故により、原子炉施設内に約400立方メートル(約400トン)という大変な量の海水が流入し、うち約5トンについては原子炉内に混入したとされています。
当然のことながら、海水流入によるステンレス鋼腐食の発生等の影響が問題となります。特に、5号機は、一部部品の開放点検ができないため、腐食の影響を確認し健全性を維持する目途が立っていない状況です。
さらに、津波による取水塔損壊・機能不全のリスクにも言及しています。
浜岡原子力発電所は、遠浅の遠州灘に立地しているため、冷却用の海水を原発敷地から沖合約600メートルの場所に作った取水塔から海底トンネルを経由して原発敷地に運ぶ方法を採用しています。しかし、この取水塔は、海洋構造物であるという性質上、津波等による損傷・機能喪失のリスクが問題となります。
原子力安全基盤機構(JNES)は、「平成20年度地震に係る確率論的安全評価手法の改良=BWRの事故シーケンスの試解析=」において、取水塔設備を有するモデルプラント(上記報告書図3.3)の津波発生時の炉心損傷頻度の試解析を行い、その中で、津波による取水塔の損傷もしくは取水口の閉塞時に海水取水不能による冷却機能喪失により炉心損傷に至るというシナリオを検討しています。そして、19mの津波に襲われた場合の炉心溶融の確率を100%としています。
そして、耐震設計についても、被告の想定している地震動は、古い知見に基づくものであり、小さすぎると言わざるを得ないことを詳しく論じています。
ぜひ原告準備書面5をご覧ください。
次回の裁判は、1月24日(木)10時30分~と指定されました。
今後とも応援をよろしくお願いいたします。