川内原発の再稼働に抗議する弁護団声明
2015(平成27)年8月11日
浜岡原発運転終了・廃止等請求訴訟弁護団
代表 弁護士 鈴 木 敏 弘
本日、九州電力は、川内原発1号機の再稼働を実行しました。
2011(平成23)年3月11日の福島第一原発の事故を目の当たりにした私たちは、原子力発電という技術が自然現象に耐えられないことを知りました。ひとたび深刻な事故に至ってしまえば、原発は、多くの人の生命、身体に重大な被害をもたらすこと、そして、放射性物質に覆われた土地はほぼ永久的に人が住めない土地になってしまうことが明らかになりました。
全国の原子力発電所が停止して2年弱、日本は電力不足になりませんでした。原発がなくなれば日本経済が破綻するというような一部の経済人の宣伝が単なる脅しに過ぎなかったことが明らかになっています。多くの国民は、原子力発電所の再稼働に反対しています。それでも、政府は、安全が確認された原発は再稼働させるという方針を堅持し、九州電力は、本日、川内原発1号機を再稼働させました。
原子力規制委員会は、安全性を判断するのではなく、新規制基準に適合しているかどうかを判断するに過ぎないと明言しています。政府は、原発の安全性を保証していません。九州電力も、新規制基準に適合しているとされたから安全だというだけです。結局、原発の安全性は誰も保証していませんし、原発の安全性に誰も責任をもっていないと言わざるを得ません。
原発の耐震設計は「万が一にも」事故を起こさないように安全側に行われなければならないのですが、九州電力の基準地震動の策定方法は数少ない過去の地震の平均像をもとにしたものに過ぎなく、不確かさを安全側に十分考慮していないものです。また、川内原発の位置はカルデラ噴火がおきないと保証できない場所ですし、過酷事故が起きた際の避難計画も不十分です。それでも新規制基準に適合しているというのですから、そのような基準は、大甘の基準でしかないことが明らかです。
岩波の雑誌「科学」の2012年6月号に掲載された鼎談で、防災科学研究所理事長の岡田義光さんは「原発は、はるかに安全サイドに考えなければなりません。いちばん安全側に考えれば、日本のような地殻変動の激しいところで安定にオペレーションすることは、土台無理だった」と述べています。同じ鼎談で、東京大学地震研究所教授の纐纈一起さんは「地震という自然現象は本質的に複雑系の問題で、理論的に完全な予測をすることは原理的に不可能なところがあります」とか「その程度の科学のレベルなのに、あのように危険なものを科学だけで審査できると考えていることがそもそも間違いだった」と述べています。福島第一原発の事故を受けて、多くの科学者は、日本国内での原発の再稼働に反対しています。
私たち弁護団は、このような多くの科学者の意見、多くの国民の意見に反して、再稼働を強行した九州電力に強く抗議します。
以上